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清学書に現れた滿洲語ハングル表記について

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发表于 2012-7-10 09:01:16 | 显示全部楼层 |阅读模式
清学書に現れた滿洲語ハングル表記について
― 特に滿洲字eに対する2通りのハングル表記をめぐって―
岸田文隆
目次
1.序
2.資料
3.清学書に現れた滿洲字とハングルの対応関係とその流動
4.滿洲字eに対する2通りのハングル表記についての考察
5 結論
1.序
現伝する朝鮮司訳院刊行の清学書(滿洲語学書)には、滿洲語をハングルによっ
て表記している部分が見られるが、この滿洲語ハングル表記は、当時の滿洲語の発
音をうかがい知るうえで、貴重な資料を提供するものと考えられる。本論文は、こ
れち清学書において、滿洲字eに2通りのハングル表記がなされている現象をとり
あげ、これが当時の滿洲語の発音上のちがいを示すものであることを主張したもの
である。
清学書に現れた涌洲語ハングル表記は、体裁上、大きく、次の二種に分けること
ができる。
(1>滿文に併記されたハングル表記。
これは、基本的に、滿文に対する表音を意図して施されたものと思われる。こ
れには、読本類(「小児論」、「八歳児」、「清語老乞大」、 「三譯総解」)と、
1漢清文鑑」の見出し語に付されたハングル表記が該当する。
(2>滿文がなく、ハングル表記のみがあるもの。
これは、滿洲語の発音を示すだけではなく、元の滿洲字の復元を可能とするこ
とをも意図して書かれたものと思われる。この種のハングル表記は、各滿洲文字
と転写ハングルが概ね1対1に対応するように配慮がなされ、ハングル28字母を
もっては表せない滿洲字の区別(例えばrと1の区別)については、特別の区分
符を施すなど、より転字的な性格が強められている。これには、「同文類解」と、
「漢清文鑑」の細注のハングル表記が該当する。
(2)の滿文が併記されていないハングル表記は、上述のとおり、概ね、各滿洲
字と転写ハングルが1対1に対応するように作られているが、若干の文字にっいて
一17一
は、複数の滿洲字が1つのハングルに対応することがある。例えば、「同文類解」
では、滿洲字蓉が連続して現れる場合に、薩の蓉はざと転写されるが、このハング
ル表記は、惹iおよび特殊字母のsyの転写にも用いられる.
1)a惹巻ambil-∠ .。茗りi(動く)[同文類解=上/29aI
2)削bRh・・ム。飼(謝[1司文類解・上/42・」
3)・y§ ・bithe・ム.奇幽α 闘書)[同文類解・上/42・亅
このような場合においては、当該のハングル表記が果してどの満洲字に対応するも
のであるかを、にわかには判断できないこともあり得る .以上の理山かち、本論
文においては、それぞれのハングル表記に対応する滿洲字が明記されている(1)
の資料のみを考察の対象とし、(2)の資料については、後日の課題とすることと
した。
上に述べたところのように、(1)の部類のハングル表記は、併記された滿文の
発音を表すことを日的として付されたと予測されるものであるが、これら資料を全
般的に観察してみると、それは、必ずしも、当該単語の発音を、実地に清人に当た
って、直接間いたとおりに書いたというものではなく、併記された滿文の字母… つ
一っに
、機械的にハングルを代入して得られたものではないかという感想を得る。
そのハングル表記は、併記されている滿文の語形に、極めてよく一致する。例えば、
1三譯総解」において、その滿文は、時に、同一の単語に対して異なった語形を示
すことがあるが、このような場合にも、そのハングル表記は、それぞれ、併記され
た滿文の語形にしたがっている。
4)d・me・ヱ男d・―m・(越えて)[4/1・川
5)d・・me・勿ブd・・-111・(越えて)【3/16・/21
6)・i・99…d・昭そ切・ig-・・nd・(上`・)【2/1・・/31
7)・」・99・d・昭初・ig… ・u―d・(上`・)― 〃13・川
要するに、(1)の部類に属する資料と雖、その滿洲語ハングル表記は、概ね、併
記された滿洲文字をただ単にル丶ングルに置換えただけのもので、極めて転字的な性
格が強く、滿洲語の発音に関して独自の情報を提供するものではない。
しかし、第3章において述べるところのように、ある滿洲字に対しては、場合場
合によって、いくつかの異なるハングル表記が見られることがある。このような場
合は、あるいは、滿洲字の字面には現れえないような滿洲語の発音の区別を表した
ものであるかも知れず、考察の対象となりえよう。本論文は、そのような、転写ハ
ングルの… 様さを欠いている特殊な場合の中から、特に、滿洲字eに対して2通り
のハングル転写が行われている現象をとりあげ、考察を加えたものである。
2.資料
―18一
本論文において、考察の対象とした資料は、読本類に属するところの「清藷老乞
大」・「三譯総解」・「八歳児」・「小児論」の4者である。涌文に併記された満
洲話ハングル表記の資料としては、前章で述べたように、このほかに「漢清文鑑」
の見出し語があるが、この資料については、まだ調査を完了していないので、本論
文では取扱わない。いま、木論文で取扱った前4者の資料の書誌的概要を略記する
と以ドのとおりである。
(1)「清語老乞大」8巻
現伝の版本は、乾隆30年乙酉く1765)すなわち英租41年に,清学訳官金振夏の監
修によって平壌監営から重刊されたものであるが、その原刊本は、朴昌裕等の損財
によって、康煕42年癸未(1703)すなわち粛宗29年の9月に、以下の1― 三譯総解」・
「八歳児」-「小児論」と共に、開同された 。しかし、本書がその以前に既に出
来上がっていたことは、「通文館志」(2巻)科挙清学の注に
「初用千字文・兵書・小皃論・三歳皃・自侍衛・八歳皃・去化・ヒ歳皃・仇難.
卜二緒國・貴愁・呉子・孫子・太公尚書並十四冊、兵燹之後只有仇難・去化・尚
書・八歳見・小兒論五冊、故抽七處冩字以1隹漠學冊數、康煕甲子始用新飜老乞大・
三譯総解、而前冊仇難・去化・尚書訛於時話故並去之、見啓辭謄録」
(下線は引用者、以下同様)
と、康煕甲子〔1684)に本書が始めて用いられたという記事が毘ており、また「三譯
総解原序」に
「今上即位之七年庚甲老峯閔相國堤擧譯院、以繼黯所刪書字少語不廣無以會其通
櫨鰻、令崔厚澤李箴李舶等動・釐正、冊怯化―仇難尚書三冊而取清
書三国志、相與辧難、作為三譯総解十巻、又解漢語老乞大、為清語老乞大八巻」
と、粛宗即位七年庚申(1680)には既に本書編簒の計画が進めちれていたと記されて
いることから、確認できる。「清語老乞大」が開刊・改刊された理由は、
1)開刋:上掲の「通文館志」の記事に、以前の用書が「訛於時話」であったとあ
り、また上掲「三譯総解原序」に、「以繼黯所刪書字少語不廣無以會其通而盡其變」
と記されていること、また、
2)改刊:「清語老乞大新釈序」に
「若老乞大則始出於丙子後我人東還者之因語生解、初無原本之依倣者、故自初已
不免齟齬生渋、而今過百季又有古今之異、假使熟於此書亦無益於通話之實、従事
本學者多病之、庚辰咸興譯學金振夏因開市往留會寧、與寧古塔筆帖式、質問音義、
辧明字畫、凡是書之徑庭者改之、差謬者正之、翌季開市時復質焉、則皆以爲與今
行話一一吻合、自此諸譯無所患於舌本之間強」
とあり、i重刊三譯総解序」に
―19一
「顧清語在今諸方語為用最緊、而舊有老乞大―三譯総解諸書、歳月浸多、巻帙散
逸、字句音釋亦不無古今之異、學者病之、金公振夏以善清語名、先以老乞大就質
於清人之習其書者、筵白而刊行之、継又考校三譯総解、刪其訛誤、獲成全書」
と、明記されていることに求めることができよう。すなわち、古い語法をその当時
の語法に改め、また語彙を拡充して実地の通話に不足のないようにするためであっ
たと考えられる。このことは、朝鮮司訳院訳学設置の所以が四方の語に通じ事大交
隣するという極めて実用的なところにあったことから、容易に理解されることと言
わねばならない。
「清語老乞大」の成立において、特記すべきことは、これが、元来、既製の滿文
テキストを底本として作られたものではなく、朝鮮において独自に翻訳・編纂され
たという点である。そのことは、上掲「清語老乞大新釈序」に、
「若老乞人則始出於丙子後我人束還者之因語生解、初無原木之依倣者、故自初己
不免齟齬生渋」
と、明記しており、また、「三譯総解原序」に、
「解漢語老乞大、為清諾老乞大八巻」
と、漢語の老乞大を翻訳して作ったことを伝えていることから知ることができる。
(2)「三譯総解」10巻
現伝の販本は、乾隆39年甲午(177のに、金振夏によって重刊されたものである
が、その原刊木は、「清語老乞大」等と共に1703年に刊行された。しかし、本書も
またその以前に既に出来上がっていたことは、上掲の「通文館志」(2巻)科挙清
学の注・及び「三譯総解原序」の記載によって確認できる.本書の開刊・改刊の理
由もまた、上に述べた「清語老乞大」のそれと略々同じものと考えられる。
「三譯総解」は、その原序に、
「而取清書三國志、相與辧難、作為三譯総解十巻」
とあるように、滿洲語に翻訳された三国志(演義)を底本として作られたことは明
らかであるが、それが、果たして、どの版・稿本であつたかは、未だ詳らかにされ
ていない。三国志演義の滿洲語翻訳には.およそ2種類の版本(順治7年(1650)
刊行の滿文本と、雍正年間刊行と思われる滿漢合璧本)があるが、筆者が、「三譯
總解」の溝文を、この両版本と対照してみたところ、「三譯総解」の滿文の内容・
語形等は、概ね前者(滿文本)と一致することが確認された。したがって、「三譯
総解」の底本となったのは、おそらく、前者(滿文本)の方であっただろうと考え
られる。ただ、「三譯總解」の満文は、その底本(満文本)の内容・語形等をそっ
くりそのまま踏襲しているわけではなく、ところどころ、底本(満文本)と相異を
示す部分が見出だされる。本論文の筆者は、このような底木との相異が生じた主な
一20―
る原因は、「三譯總解」が朝鮮司覲院A2盤いて編纂される際に、その庭本(満文本)
が依拠したもの[嘉靖本]とは異なる版に属する、三国志演義の漢文版本[おそら
く李卓吾本に類する版本]を参照して、独薗の改変が行われたためであろうと推測
する。すなわち、「三譯總解」とその底本(満文本)の間に相異が見られる部分に
おいて、底木(満文本)の方は嘉靖本の内容に一致するのに対し、「三譯總解」の
方は李卓吾本の内容に一致するのである。そのような、底本と摺異を示す部分にお
いて、時に、「三譯總解」が、溝洲文語の規範的な語形とは相異する特殊な語形を
見せることがあるが、興味深い現象である。なお、「三譯總解」の底本問題等の詳
細については、近刊の拙論を参照されたい 。
(3)「八歳児」1巻
現伝の版本は、乾隆42年丁酉(1777)に、金振夏の監修によって重刊されたもの
であるが、その原刊本は、「清語老乞大」等と共に、1703年に刊行された。しかし、
本書の由来はさらに遡ることができ、「訳官上言謄録」己卯(1939)5月11日には、
本書がもと女真学の用書であったものを、申繼黯によって滿洲字に写出された旨が
記されている。
「本學中有才申繼黯、(中略)傳来珊本中所謂巨化・仇難・八歳皃・小見論-尚
書等五冊、以清書寫出而清旁註質之」
本書の原典については、いまこれを詳らかにする術を持たない。
(4)「小児論」1巻
現伝の版本は、乾隆42年丁酉(1777)に、金振夏の監修によって重刊されたもの
であるが、その原刊本は、上の3書と共に、1703年に刊行された。しかし、木書の
由来が、さらに古く女真学にまで遡ることは、上の「八歳児亅と同様である。
本書の原典等については、『八歳児」の場合と同様、女真学用書がすべからく逸
書に属する現状においては、これを詳らかにする術を持たない。ただ、このことに
関連して、一言付言しておくべきことは、既に閔(1964)が指摘したところのよう
に、本書と大同小異の内容を有する漢文の「小児論」が存在するということである。
すなわち、清学書の「小児論」は、金国・あるいは朝鮮で独自に創作されたもので
はなく、漢籍からの翻訳にすぎない。閔(ibid.)は、敦煤変文中に見出だされる
「孔子項託相問書」と称する一連の文書が清学書の「小児論」と相似した内容を持
っていること、さらに、漢文「小児論」の明代寓暦年間の刊木が伝わることを報告
している。漢文の「小児論」は、相当に流布されたものの如く、日用類書の類いに
もしばしば収録されている4㌔清学書の「小児論」は、そのように広く伝えられて
いた漢文の「小児論」を、金国・あるいは朝鮮において、女真語に翻訳したもので
一21一
あったと思う。
3.清学書に現れた滿洲字とハングルの対応関係とその流動
滿洲字eに対する2通りのハングル表記についての考察を行う前に、まず、清学
書における滿洲字と転写ハングルの対応関係の一般を示す必要があろう。ここでは、
「三譯総解」を例にとり
、観察を行うこととする。本論文で取扱った資料、すなわ
ち読木類に属するものは、資料相互の問に、滿洲字と転写ハングルの対応関係のさ
したる違いは認めちれない。ただ、本論文では取扱わなかった、辞書類の「漢清文
鑑」の見出し語に付されたハングル表記は、読本類のものとは面貌を一新しており、
いくつかの滿洲字に対しては、異なった転写ハングルを使用している。例えば、滿
洲字fに対して、読本類に属する資料はハングルエpをあてるが、辞書類の「漢清
文鑑」はハングル客β をあてる。このような清学書間の転写ハングルの使用法の違
いは、各資料の性格を解明するうえで、いずれ、取扱わねばならない問題であるが、
ここでは触れないこととする。将来、「漢清文鑑」についての調査を終えてかち、
考察してみたい51
「三譯総解」の滿洲語ハングル表記に見られる滿洲字とハングルの対応関係は、
以下のとおりである。
(1>母音字
a:トa
e・→ ・
=,uI
i:ノi
o:丿_o
u:― アu
u:― アu
・刃・・
OO=こと00
ai:り・i
ei:→ ノ・i
9田i
・m・・gi・o腱・レa―mar-・i(後ろ)【1/1b川
・b・・m・・唱メ初レ・b― ・y・一…(急いで)11/1・/2亅
・embi・釧・一一bi信う)[1/2・川
・・ib・・…1拷ズi-・・一・・一・・(止どめて)
臼/1a/2亅
m・・in・呈辺m・― ・i・(馬)i1/1a/6]
・ba・卑りト'・-ba(ここ)【1/1a/2]
sark藪:彦孑sar-ku(知らない)【1/2a/3亅
ji… gji・藪・・菩砲j・・g―j… n(将軍)
【1/2a/3】
b・・d・・甥b・・-d・稼`・)[1/1・川
・thai・甕弓'・d―h・i(ただち。・)【1/1・/5]
・・terem… ∂ノ彦仞・1'・・― ・・一・・-m・(いか1・)
[1/6a/5亅
・… e… 砕5〕'a― ・y・一・(嫂らの)
工2/18b/4]
―22ー
)■.判一
・i司・i
頓・丁〕・i
ooi:土

ao:止a・
… コ・・
:ヱ田o
io:ユ上io
・・伺跚・・コ}刺・。且―d・― …(ながらく)田6a川
d・ib・leci・彳彫うヌd・i―b・一・一・一・i
注)「小児論」には
ioi
《比べれば)13/8a/.1】
h穫i・刻hui(會)【6/1a/2】
… b・Q・・学bo・・(家の)[1/・b/2」
し§ ・imao・刈塗・aim・・慓瑁)14/1・川
se・1・・星8う・・o― ・・(推察せよ)[1〃・川
he・・象hm・(侯)〔5〃b/1」
bio:翌bio(有るか)[1/6b/3亅
、滿洲字のioを一ガyuで転写した例が見える。
・i・・g・i・・ha・労・財・1y・g― ・y・―h・
(がちょう)[小児論:10b/4]
・子…
・ヨy・i
i・W・・μ1-・・a
u
S l O l
曩9/19a/1]
lioi
・ang:4髣・・o・
b・・引号・y・i
cya9(許昌)
b u (呂布) [1/肇b/書」
iow・i・孑刻'・'y・ai(呉越)【3/1・b川
hi・w・・d・・翊・y・・一・・(玄徳)D・/25b/3」
(2)子音字
n=Ln
m=口m
ng=69
k=ヲk/― 音節初頭
:フ9/音節末
9ニフ9
h:方h he・d・m・・碓
t:巳t/音節初頭
:1二d/音節末
d:Od
b:屓b
P:弘P
f:」立P
s:メs
・imek・・レ)・仔・レm・一・・(病)11/8b/3亅
m・・ambi・轄り1m・一・am-bi(拒む)[1/4・川
ma・9・i・喀・}ma9-gi(あと)11/1・/61
k・ms()・{経k。m-・・(少ない)【3/4b/6璽
・akd・・飼一・ag-d・(老いた)[1/1b川
gene… 刀掴・・-n・一・・(行・て)[1/1・/4】
劉h・n―d・―m・信う`こは)【1/7a/6」
t・・g-・髪{菱… 一… (躍・け)【1/1・川
・th・i・老切'・d-h・i(ただち`・)田1・/5亅
d・hame・∫1一ず・うd・―h・一・一(従って)D/1・川
b・・eh・・明司b・―n9―h・(送った)[2・/1/1」
w・・… g剣砂・・・… g幗屏)M・/・]
・onj・me孝ス回・・n-j・―m・(聞く`・は)【1/5・川
・ej… メ浬・・-j・・n(車)μ/1b/6」
蓉・sy(惹a・ス戸・ya)
一23一
し腑araha・彦μ 盻須・一・y・一・・-ha(誤・た)
[1/4a/4亅
・ス芦・yaa醂・bu・… レ匪昇ケ'・― ・y・― ・y・-b・―r・
(動ヵ、―す一) 13/23b/31
… y(・a・ヌ芦・ya)
・・)畳一・e溢刎・・y()一―h・)…m・(特`こH1/3・朗
j:jy(ja:ス}二jya>
」・k・・ヌトオj・・-k・(物)[1/4b川―
1 =ar 虱oho:」乏―=弘ro―ho (躍要丿丿) [9/1b/1]
r・〃 f… fi彦刻・・― ・・――pi(ふり向いて)【7/14b/2亅
y:y(ya・・ト'ya)
yamun・・隠'ya-mUI1(衙門)11/5a川
(iya・Fya)
・i・・lm・・桝・y・・-ma(人)【2/1b川
W・・(wa・
.外'・a)・(W・・羽'・。)
w・k・・9冴'・a―k・(~ でなし・)11/1・/3】
w・・羽'・・(誰)口/2a/2亅
〈・wa・サ・a)・(・W・・月・。)
j・wan・継j・・a・(― 卜)[10/20・/6】
suwe=剃suo(なんじら)[2/1b/3]
(・W・・丁外・一'o・)・(・W・・ブ男・… ・・)
し・w・身外t・―'・a(見ろ)卩0/26b/2】
手刻
豺・1・・a・
juwe: jyu―,ue(二)卩0/18a/1】
k=用例なし
倉:フg h百wal19 9ail gai(黄葢)15/16a/41
后二川例なし
t6・C(し§a・ヌ1-ca)
扁・iya・9・刈物ai'y・g(蔡陽)【2/1・/2亅
dz=j(dza:ス1-ja)
dungd・… 髣丕d・g-j・僅卓)【1/4b川
Z・zy(乞U:今・yu)
凵h・司弁・i・y・(李儒)11/1・b川
注)「三譯総解」においては、字母Σ は、―母音字uと結合した形しか現れない。
(3)その他
―24一
sy:ムs田
dy:用例なし
jy;用例なし
しぎi = .三乙-cu王
dzi:丕ju1
t・i・y剛ムねi一・胆(太師)【1"a川
し ぎ i t ぎ i ;彡五cu王一cu1 (刺史) 18/19a/61
d・iji・g・三男伽jig仔敬)【3/4b/21
上の表から観察されるところのように、清学書(「三譯総解」)の滿洲語ハング
ル表記は、概ね、償記された滿文の字面にしたがって、滿洲字を一つ一・つ機械的に
ハングルに置換えたものであるが、ある滿洲字に対しては、いくつかの異なるハン
グル表記が行われていることがある。いま、そのような、転写ハングルの一様さを
欠いている場合のそれぞれについて、若干の説明を行いたい。
(1)e
滿洲字eには、→oと_UIの2通りのハングル表記が見られるが、これにっいて
は、次章で考察を行う。
(2)行
滿洲字百には、Tuとフ→ueの2通りのハングル表記が見られる。嚢がそのいず
れで転写されるかは、百の前の子音字によって、決定される。「三譯総解」におい
ては、滿洲字nは、子音字k,g,h、およびyの後にしか現れないが、 k,g,
hの後の場合にはTuで転写され、yの後の場合には爿ueで転写される。この現
象にっいては、すでに、池上(1950,1954,1963)が、「漢清文鑑」等を資料として、
詳細な研究を行っており、ここで再論する必要はない。
(3)玉o
ioには、-1Lyoと万yuとユLioの3通りのハングル表記が見られる。ほとん
どの場合は、ヱioと転写されており、」広yoとπyuは、ごくまれに、漢語かち
の借用語について用いられているにすぎない。ハングル表記Try uの例は、滿洲字
の文字連結ioの0に対して、ハングルノーOを当てずにTUを当てている点が注目
される。しかし、このような表記は、この資料では、上に挙げたlioi bu
(呂布)という語にしか見られない。一方、池上(1950,1954」963>・今西〈1958>
崔(1969)・成(得84>は、辞典類に属する「漢清文鑑」においては、文字連結
ioのoに対してハングルー厂uを当てた形である「げyu,― 十iuという転写が多く
現れることを報告している。
8)・i・mbi・著・1・y・m―bi〈寒さが骨まで透る)[灘文鑑・217・亅
9)bi・叫bi・侑るか)[漢清文鑑・17・・]
cr―)bio=婁bio〈有るか)[三譯総解:1/6b/3亅
清学書によるこのような表記の違いの原因については、さらに考察を要する。
一25一
(4)uwa,uwトe
uwa,uweは、了Pua,アlueのように一字で転写される場合と、丁9}-u-
'oa
,丁刻u―'ugのように二字で転写される場合の二通りがある。この現象
についても、池上(1950」954」963)の研究があり、再論の必要はないが、そこで
は、この書分けが滿洲語の音韻上の区別・あるいは音声的な差異を表したものであ
ろうと、述べちれている。
6 ,
4.滿洲字eに対する2通りのハングル表記についての考奈
前章において述べたところのように、清学書において、滿洲字eは、普通、→g
で転写されるが、一部の語に現れるeについては、,UIで転写されることがある。
いま、読本類から、滿洲字eがハングル,UIで転写された全語例を抽出すると、以
下のとおりである。
(1)「三譯総解」10巻
1)必ず_u1で転写されるもの
A.滿洲語固―有語
aise
bedere一
besergen
dere
deri
feser
hese
medege
s e
(selnbi,
リム'ai-su1(~ のではないか)
・り杉司b・― 曲― ・・褪く)
:門老7まbe―sulr-gen〈寝台)
・刎曲㎜ ・・(~ だろう)
=彡多}d田冖ri(~ から)
刻を・・― ・瞑(こなごなに)
・句ムh・― ・田(旨)
:巧彡刃me―d砌―ge(消息)
:とSU」(言う)
seme,sefi,sere,
1例
37例
5例
13例
1例
2例
5例
1例
309例
serenggeなど)
t・tendere・彡梶翊t・―t・n― 曲― ・・(~ する限りは)3例
B.漢語からの借用語
c u s e
dengjan
hen9
heo
heo
keo
mei
=彳∠」cyu}SU1(竹子)
・居准d岫―jyan(燈蓋)
:著hUlg(横〉
:彡h田o(侯)
:・彡hUlo(后)
・彡k田・(口)
=彡}m田i(椰)
2例
4例
1例
11例
5例
3例
1例
一26―
・efu ・ム彳・臓一・・(師傅} 2例
seng :4rsulg(生) 26例
2)→gと_u1の両方の転写が見られるもの
複数を表示する接尾辞―se―(~ ら〉のeに対するハングル表記には、→oと一
皿の両方が見られる。まず、―seが刈s9で転写される例は、全部で31例で、次
のような用例が見られる。
b・t・r・・e・別一髣ズ弛・-t・-rus・(勇者ら)
ese 二のスう'e-se(この者ら)
9・cuse ・孑身刈9・― ・y・一・・(友ち)
juse 婿メうj・・一・・仔供ら)
mergese ・望フ粥m・r― ・・一・・(智都)
merg・nSe:鬼姻m。・一・・n-・・(儲ら)
muse ・貂弛世・・俄ら)
一方
、―seがムsu1で転写される例は、6例で、次の用例が見られる。
1idiyanse・彡}を―ム・idyan
a蓉a
a§a s
tゴai
sei
e
dzung
・・琳到'・― ・y・
・・}メトム'a-・ya
・e・刈そム・ai
【6/25a/1亅
:至 辺ムCOO '
1例
1例
3例
9例
2例
1例
14例
su1(李典ち)[2/10a/6亅
s田i(嫂らの)【2/18b/4]
SUI(嫂ら)【2/19b/41
jug S田(蔡中ら)
tesei 目ろlt。一・面(彼ちの)【9/6b/6]
tgoo in se in SUI(曹仁ち)[9/17b/5亅
ちなみに、複数の接尾辞―seの異形態である-saに対して、=ムs繊と転写した
特殊な例が、1例だけ見える。
jiyangji・面・a・茗砲ムj・・g―j… n・田(将軍ら)
[6/6b/21
このように、複数の接尾辞一seは、「三譯総解」では、刈sgとムSUIの2通
りに転写されているが、上の用例を見る限り、どのような場合にノ→seと転写され、
またムSUiと転写されるかは、予測することができないもののようである。ただ、
二三の例外を除いて、大体、それが前の語に連綴される場合には刈sgで転写され、
前の語と分綴される場合にはム,Smで転写される傾向を認めることはできるが、十
分に環境を指定することはむずかしい。
(2)「清語老乞大」
A.滿洲語固有語
・ise ・・リム'ai-su・(~ のではないか) 2例
一27一
b・dere一 岡翊・・― 曲― ・・(退く) 8例
d・r・ ・彡司dr・・(~ だろう) 11例
d・・i ・彡の面― ・iく~から) 1例
fusc・i 考ム司pu-一― ・i(山㈱ 1例
hengke 考ヲうh呶9-ke(瓜) 3例
hese ・う払h・― ・叭旨) 1例
se- :メSUI(言う) 121例
―se ;ノ・suI(~ ら) 97例

sebder' ・瑁翊・・b―d・・`―r'(陰) 2例
… e・dere・曜翊・・一・・n-・㎝ ― ・・(~ する限りは)2例
useri :」争、ム多・'u―s田一ri(ざくろ) 1例
B.漢語からの借用語
cuse :斎―ムcyu―SI慧(竹子) 2例
dengjan :」髫属ヒdulO-jyan(燈盞) 2例
di・gse ・弓ムdig― …(頂子) 2例
feise :彡ムpgi―su1〈坏―子) 1例
fengse :」凶メpe9―s田(盆子) 1例
0'
91se :フ1ムgi―su1(妓子) 1例
hiyase :詐∠ゝhya―su1(匣子) 10例
・・wa・gse・君ムk・a9― ・田(筐子) 1例
Ieose :彡≡∠ンruIo-s田(樓子) 3例
ma・e ・・ト.ムma-・田(麻子) 2例
puseli ・手ム中・・一・田― ・i(舗子裡) 3例
sefu :丕―考・SUI-pu(師傅) 8例
wase 3γ △'oa-su1(瓦子) 3例
なお、「清語老乞大」においては、複数の接尾辞の―seは、前の語と分綴され
る場合だけでなく、連綴される場合にも、大体、ムsu1と転写される。
nehu seb・・晦ム・1・・―}1u・田―b・(女中らを)[6/22b/1]
muse ・孑ムm・一・田俄ら)I1/1。a川
andase =せジトム'an-da-su1(朋友ら)臼/15a/3】
ただし、juseの一語に関してだけは、そのseは、刈soと転写される。
juse ・列」yu-・・(子供ら)B/9b/2】
(3)「八歳児」
A.滿洲語固有語
-28―
dere
hese
se
s e
・三司翻一・・〈~ だろう)
・同ムh・― ・唄旨)
:みS田く言う)
:みsu1(~ ら)
1例
1例
19例
1例
B.漢語からの借用語
… sel・・ak・躯彡紛子… o-… ― ・a-・a―k・
(鍵をかけない;yoose=鑰匙) 1例
(4) 「小児論」
A.滿洲語固有語
b・dere- ・彬彡lb・ー伽一・・褪く)
dere ・翊d田― ・・(~ だろう)
se- :メSU1(言う)
B。漢語からの借用語
Cuse :孑トムcyu―SUI(竹子)
1例
1例
14例
1例
上の単語一覧から看取されることは、滿洲字eに対するハングル表記の書き分け
が、清学書ごとの若干の相違はあるものの、ほぼ単語により一定していることであ
る。この点から見て、この書き分けは、転写の際の単なる書き誤りによるものでは
なく、何らかの滿洲語の発音上の差異を表そうとしたものであると考えられる。い
ま、この現象について、若干の考察を加えることとする。
中世及び近世朝鮮語におけるハングル→9と_UIの音価は、現代朝鮮語のそれと
さしたる相違がなかったものと思われる。「訓民正音」解例本の制字解には、
「→(9)與一(U1》同而口張」
「_(旧)舌小縮而聲不深不淺」
とある。ここで、ロ張・舌小縮とは、それぞれ開口度―及び舌の前後に関して言っ
たものであろう。したがって、ハングル→o・_1uは、中・近世朝鮮語においても、
現代朝鮮語と同様、それぞれ[0]―[攤]の音価を持っていたものと考えられる。
このように推定された、中・近世朝鮮語におけるハングル→e・_u1の音価かち、
清学書に見られる滿洲字eに対する2通りの表記は、この滿洲字が、ある場合には
[g]の音緬を持ち、またある場合には[醐]の音価を持っていたことを表すもの
と、一応予測することができる。しかし、ここで問題となるのは、清学書の滿洲語
ハングル表記が、朝鮮語に対する表記法とは異なった別個の体系を有していた可能
性である。清学書のハングル表記は、同時代の朝鮮語資料における表記体系と異な
―29―
った面を確かに持っていた。例えば、前章で述べたように、「三譯総解」の滿洲語
ハングル表記には、滿洲字特殊字母の乞を転写するのにハングルムzが使われてい
るが、
1・)1i… 司弁・i・y・(李儒)11〃・川
このハングルは、朝鮮語の表記においては、この時代にはすでに廃用されていたも
のである。「三譯総解」中の朝鮮語訳文においても、この文宇は現れていない。こ
のように、清学書の滿洲語ハングル表記は、当時の朝鮮語の表記体系とは、必ずし
も一致しない面を持っていたのである。したがって、叙上の滿洲字eに対する2通
りのハングル表記の問題は、さらに、清学書独自の表記体系に照らして、すなわち、
清学書において滿洲語の表記に当てちれたハングルの使用状況全般に鑑みて検討す
る必要がある。
清学書において、ハングル_uIは、滿洲字sy,しぎi,dziの転写において
も用いられる字母である。
1D・ytu :ム彳・瓢―t・伺斟[三譯総解・1/4・川
12)tぎiしぎi :五丕.cuI―cu1(刺史)[三譯総解:8/19a/6]
注〉ただし、この部分は、「満文三国志」ではsysy、また、「滿漢合壁三
國志」ではし6isyとなっている。
響3)f・d・i ・孑丕P・―jm(夫子)[小児論・1/1a/3]
このことから、滿洲宇eが時にハングル_UIで転写されている現象は、それが時に
は滿洲字sy,tぎi,dziと同ー一の、または近似した音価を持っていたことを
表すものと推測される。ところで、滿洲字sy,tぎi,dziは、漢語からの借
用語を表記するために作られたいわゆる特殊字母に属するものであるが、この3者
は、それぞれ、
sy=(ピンイン方案の[s日に該当する漢字)四、思、司など、
t6」=(ピンイン方案の[c冂に該当する漢字)慈、次、此など、
dzi=(ピンイン方案の【zi】に該当する漢字)滋、子、資など、
を表記するのに用いちれる。このことから、清学書において、滿洲字eに対し、時
に、特殊字母sy,tぎi,dziに当てるのと同じハングル_UIを当てている現
象は、滿洲字eが、漢語の「四、思、司、… 」などに含まれる母音と近似した音価
を持つ場合があったことを物語るものと言える。すなわち、滿洲字eが、多くの場
合においては[e]の音価を持っていたが、時には高母音[丑]あるいは[旧]の
音価を持っこともあったことを示すものであろう。
すでに、崔(1969>・成(1981」984)、においても指摘されているように、滿洲字
eがハングル 田で転写されるのは、sやdなどalveolarの子音に後続する場合に
多い。このような環境において、高母音化の現象が起こることは、十分に可能なご
一30―
とと考―えられる。
っぎに、叙上の推測に対する傍証を、滿洲語のその他の資料に求めることにする。
滿洲語に関するその他の資料は、滿洲字eに2通りの音価があったことを、十分
には伝えていない。「清文啓蒙」・「欽定清漢対音字式」・「増訂清文鑑十二字頭」
等の漢字注音の中には、滿洲字eが、時に高母音[1]あるいは[田]の音価を持
っことがあったことを伝えるようなものは見当たちない。
M)e:悪[e],se:塞[se]など[清文啓蒙=巻1]
15)e:額[e],se=色[se]・塞[se]など[欽定清漢対音字式]
また、Ada鵬(1873)、11arlez(1884)等の滿洲語諸文典の記述にも、この現象を
伝えるものは見当たらない。
また、滿洲語の口語を調査した諸家の報告にも、そのような現象を認めることは
できない。たとえば、Py皿HeBb(1912)、服部(1937」941)、河野(1944)
等には、この現象は記述されていない。愛琿滿洲語を調査した王(1984)も、母音
eについて、
「o的舌位介于[田]与[e]之間」p.55.
とは伝えるが、この母音が、時には[e]の音価を持ちまた時には[Ul]の音価を
持っということまでは、述べていない。また、黒龍江省富裕県三家子屯の滿洲語口
語を調査した清格爾泰(1982)の報告にも、叙上の現象は見られない。
しかし、Shirokogoroff(1924)の~欠の注記は、滿洲字eが、時には、漢語の「四」
の母音と近似した音価を持つことを伝えている。
「ξ…-has no equivalent in[ng日sわand is a very"back"e:so蹴eti団es it
aPProaches to the Russian sound望 in s五n (son)or Chinese sound i
涌 sl σour).」P.IV.
この記述は、用例などが示されていないので、不明瞭であるを免れえないが、お
そらく、これは、滿洲字eが時に高母音[翌]あるいは[田]の音価を持っことが
あったことを伝えるものと思われる。
また、最近、季永海・他(1989)が富裕県三家子屯の滿洲語口語について行った
報告においても、
「e可以与田自由変読jP.6.
と、滿洲文語のeが時に高母音[u1]の音価を持つことがあることを伝える記述が
見られる。
最後に錫伯語口語の例を挙げる。「錫伯語簡志」、「錫伯語口語研究」によれば、
滿洲文語のeは、錫伯語口語において、だいたい9に対応している。ところが、時
に、高母音のiで現れる場合がある。
一31一
錫伯語口語
besirhen
dih
dirhi
eldeshim
ershim
czhilem
ezhim
fuduzhim
fUsuzhim
hezhim
jirhi
sellgsim
sim
simezhen
sirnkel
sizhen
suasilem
temsiln
uzhin
zhim
(以下の錫伯語口語は、
滿洲文語
besergen
dehi
dergi
elde§embi
er≧iembi
ejelembi
ejembi
fudejembi
fusejembi
hejembi
Jergl
sengsembi
sembi
semeJ en
sengku星e
seJen
「錫伯語口語研究」の綴字に拠る)
意昧
寝床
四十
上、西(滿洲文語では東)
きちめく
世話をする
占領する
書き記す
ほころびる
破れる
あえぐ
等級、~ など
乾く
言う
腸をおおう汕
にら

上の語例のほか、さらに、
語ではderi)が、-diriという異形態を持つことを伝えている。
このように、錫伯語において、滿洲文語のeが高母音iで現れるのは、d・j―
s・蓉など歯音系の子音に後続する場合に多いようであるが、これは、滿洲字eが、
そのような環境においては、時に高母音化することのあった可能性を示唆するもの
であり、清学書で滿洲字eがハングル,ulで転写されていることと同軌の現象であ
ると考えられる。
蓉uwaselembi刷毛で塗る,印刷する
tem§embi 争う
ujel1 重い
jembi 食べる
「錫伯語箇志」p .43には、離格助詞―dori(滿洲文
5.結論
以上、本論文においては、清学書において、滿洲字eに対して2通りのハングル
表記がなされている現象をとりあげ、考察を試みた。各章において得られた結果を
略記すると以下のとおりである。
まず、第2章において、清学書読本類の書誌的概要を述べたあと、第3章で、
―32一
「三譯総解」を例にとり、清学書読本類における滿洲字と転写ハングルの全般的な
対応関係を観奈した。その結果、清学書の滿洲語ハングル表記は、概ねは併記され
た滿洲文字をただ単にハングルに置換えただけの、転字的な性格の強いものである
が、ある滿洲字に対しては、いくつかの異なるハングル表記が見られることがある
ことが確認された。
っぎに、第4章では、このような特殊な場合の中から、特に、滿洲字eに対して
2通りのハングル表記がなされている現象を取上げ、考察を行った。まず、清学書
読本類から、滿洲字eが一田で転写された全語例を抽出・提示することによって、
このような滿洲字eに対するハングル表記の書分けが、各清学書ごとの若干の相違
はあるものの、ほぼ単語により一定していることを確認した。つぎに、清学書にお
いて、ハングルーu1が、滿洲字特殊字母のsy,tぎi,dziの転写にも用いち
れる字母であることに着目し、滿洲字eが時にハングル_luで転写されている叙上
の現象は、滿洲字eが時に特殊字母のsy,tぎi,dziと近似した音価を持っ
場合があったことを示すものであることを指摘した。そして、特殊字母のsy,t
ぎi,dziは、それぞれ、漢語の(sy)四・思・司、(tぎi)慈・~欠・此、
(dzi)滋・子・資などを表記するのに用いられる字母で、高母音の[五]を含
むものと考えられることから、滿洲字eに対する叙土の書分けは,滿洲字eが、時
に高母音の口]あるいは[田]の音価を持つことがあったことを示すものと推測
した。そして、さらに、そのような推測が、滿洲語日語についてのShirokogororf
(1924>および季永海・他(1989)の報告や、錫伯語口語の―一部の単語において、
滿洲文語のeが高母斎で現れる事実等にも、傍証を得ることができることを述べた。

1)また、転写ハングルの区別がなされている場合においても、編纂の際に基づい
た底本が未だ十分明らかでない資料の場合には、そのハングル表記がはたしてどの
満洲字に対応するものであるかを判断することは難しい。成(198のp.39において
述べられているように、「同文類解」の下巻11aには、「寺院」がハングルムSUI
で転写されているが、これは、滿洲語綴字のseを転写したものであるのか、sy
を転写したものであるのか判断しがたい。「同文類解」では、一般に、滿洲語綴字
のseに対してはムの、またsyに対してはfのハングル転写を与えるが、「同文
類解」の底本の一つと考えられる「広彙全書」【1/20a]には、「寺 sy」となっ
ていることかち、「同文類解」中の「寺院」の△ は、あるいは、滿洲語綴字のsy
を表記したものであるかも知れない。
2)「清語老乞大新釈序1、「重刊三譯総解序」、および1三譯総解原序」の記載
に拠る。
―33―
3)この拙論・「『三譯總解・底木考・は・咤叶・履呈・げルタイ学報]第2
号(ソウル:1he A―taic Society of Korea)に掲載される予定である。
4)ruchs{冊66)の口絵(・TArH13)およびPP.78-80個o,142-145)には、漢文の「小
覺論」を収録したいくっかの日用類書が挙げられている。また、東京大学の東洋文
化研究所に所蔵される「新鐫卓吾先生通考指掌雑字」個o.子/類書/132)と題する
H用類書にも、漢文の「小児論」が収められている。
5)各清学書の転写ハングルの使用の実態と、清学書閻の相違にっいては、成(掬
84)に、比較的詳しい調査が行われている。
6)清学書において滿洲字eに2通りのハングル表記がなされている現象について
言及した過去の研究は、以下の通りである。
清学書のハングル表記を、滿洲語音韻の研究資料としてはじめて利用した池上
(1950」954」963)は、ハングル表記が一様さを欠いている3つの場合(滿洲字0、
io、uwa-uweに対するハングル表記)にっいての考察は行ったが、滿洲字
eに対する書分けについては扱わなかった。清学書に滿洲字eに対する書分けが見
えることを初めて報告しためは、今西(1958)であるが、そこでは、1漢清文鑑」
のハングル表記について次のように述べられている。
・[・II・1'・又はユ'田
(中略)「滿・細」では殆ど皆ol'gを使う。例えば[e]はol'g、[eng]
は励・9、[… 9]は招・・D、[teng]は亳ヒ・9、[b・i]は・η
bei、[sen]はス註sel1の如きである.ただ[sembi]に限り.(se.
・eme・・ehe等の変化形を含む)必ず」≧'・・を使う・ム・… 珂一一
m・・刳・一一・・の如きである.しかし[・・nse]辻とka・― 跚
の如きも見当り、探したらこの類もなおあろうかと恐うが、大休に於てすべて・う
'eであり
、ただ[sembi]だけが、9-'田であることには例外がない。こ
の理由は分らない。(後略)」p.43.
次にこの現象について言及を行ったのは、崔(1969)であるが、そこでは、今西
(ibidjと同じ「漢清文鑑」を資料として、滿洲語のseやdeという音節中のe
に対して、ユ'u1のハングル表記が多く現れることが指摘されている。
金(1973)は、「清語老乞大」を主な資料として、満洲字eに対するハングル転
写の書分けの実態を報告している。
さちに、津曲(1977」978)も、滿洲字eに対するハングル転写の書分けが、「清
語老乞大」に現れ、それが、単語によって一定していることを、述べている。
成(1981>は、この滿洲字eに対するハングル転写の書分けの問題を、「同文類
解」を資料として、考察し、滿洲字eが/1∬ で転写されている例が、付属語として
用いられる語に多く現れる事実を指摘したうえで、
一34一
dere・司司d・一・・懶)嗣文類解上川b亅
d・・e・彡彡うd田一・・(~ だろう)洞文勳峯下"9a]
この表記はおそらく母音の弱化を示すものであろうと、推測している。
成(1984)は、この問題を、さらに、その他の清学書一般についても、調査し、
大休、成(1981)と同じ内容の主張を行っている。
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『御製増訂清文鑑』32巻総綱8巻補編4巻補編総綱1巻続入新語2巻,乾隆36年
一37一
(17召)序,京都大学文学部所蔵.
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(哲宗13年重刊本).
『譯官上言謄録』 ソウル大学校図書館奎章閣所蔵(図書番号12063) .
(きしだ ふみたか、博士後期課程)
―38―

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发表于 2012-7-15 14:18:46 | 显示全部楼层
你发的什么?
乱七八糟哦……
都是东洋话……
发表于 2012-7-15 14:20:36 | 显示全部楼层
还有
怎么连编程代码都上来了……
复制粘贴也认真点吗……{:soso_e112:}
发表于 2012-7-16 22:36:04 | 显示全部楼层
4)d・me・ヱ男d・―m・(越えて)[4/1・川
5)d・・me・勿ブd・・-111・(越えて)【3/16・/21
6)・i・99…d・昭そ切・ig-・・nd・(上`・)【2/1・・/31
7)・」・99・d・昭初・ig… ・u―d・(上`・)― 〃13・川
-----------------------------------------------------------------------------
本想翻译下的,往下一看头都大了,算了不看了。
 楼主| 发表于 2012-7-27 10:40:51 | 显示全部楼层
阿尔宾 发表于 2012-7-16 22:36
4)d・me・ヱ男d・―m・(越えて)[4/1・川
5)d・・me・勿ブd・・-111・(越えて)【3/16・/21
6)・i・99…d・昭 ...


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